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花漬売
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はなづけうり
昼は賃仕事に肩の張るを休むる間なく、夜は
宿中の
旅籠屋廻りて、元は
穢多かも知れぬ
客達にまで
嬲られながらの
花漬売、
帰途は一日の苦労の
塊り銅貨
幾箇を酒に
易えて
さては
花漬売が心づかず落し
行しかと手に取るとたん、
早や
其人床しく、
昨夕の亭主が物語今更のように、思い出されて、
叔父の憎きにつけ世のうらめしきに付け、何となく
唯お
辰可愛く
決して私めが
僣上に岩沼子爵の御令嬢をどうのこうのとは
申ませぬから、金円品物は
吃度御持帰り下され、
併しまざ/\と夫婦約束までしたあの
花漬売は、心さえ変らねばどうしても女房に持つ覚悟