花漬売はなづけうり)” の例文
旧字:花漬賣
昼は賃仕事に肩の張るを休むる間なく、夜は宿中しゅくじゅう旅籠屋はたごやまわりて、元は穢多えたかも知れぬ客達きゃくだちにまでなぶられながらの花漬売はなづけうり帰途かえりは一日の苦労のかたまり銅貨幾箇いくつを酒にえて
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
さては花漬売はなづけうりが心づかず落しゆきしかと手に取るとたん、其人そのひとゆかしく、昨夕ゆうべの亭主が物語今更のように、思い出されて、叔父おじの憎きにつけ世のうらめしきに付け、何となくただたつ可愛かわい
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
決して私めが僣上せんじょうに岩沼子爵の御令嬢をどうのこうのとはもうしませぬから、金円品物は吃度きっと御持帰り下され、しかしまざ/\と夫婦約束までしたあの花漬売はなづけうりは、心さえ変らねばどうしても女房に持つ覚悟
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)