良弁ろうべん)” の例文
行基ぎょうき良弁ろうべんのごとき名僧が側近にたすけたことも見逃しえないが、しかしここに感得さるるのは、そういう外的事情のみではない。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
良弁ろうべんのようにキビキビした表情を持った男が生存した時代には、われわれの想像するような敏感な女がいなかったはずはない。
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
奈良朝時代に華厳宗けごんしゅうの大徳良弁ろうべん僧正の幼少時代に於て現出された——それは、今般、ここらでお馴染なじみになっている猛禽と同様
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
甚だ頻繁ひんぱんに風説せられるようになったけれども、中世以前には東大寺の良弁ろうべん僧正のように、わしに取られたという話の方が遙かに多く、その中にもまたまれには命を助かって慈悲の手に育てられ
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
三月堂の良弁ろうべんが彫刻家としても優れていたという伝説などは、一概にしりぞけてしまうわけには行かないであろう。
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
良弁ろうべんとか弁信とかいったような可愛らしい坊主の頭の一つもあれば、さらってみようとの出来心を起すかもしれないが、この薄汚ない、拾ったところで十八文にしかならない老爺を
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
周知のごとく、東大寺を襲った幾たびかの災禍を免れて、いまになお天平てんぴょうの姿をとどめる唯一ゆいいつの御堂である。天平五年聖武しょうむ天皇が良弁ろうべん僧正に勅して建立こんりゅうせしめ給うところと伝えらるる。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
天平五年に僧良弁ろうべんのために建立せられたと伝えられる三月堂中の乾漆諸像が、すでに明らかに天平様式を示しつついまだなお十分に自由の感じを与えないこと
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)