艙口ハッチ)” の例文
息も出来ないような風圧に慌てた中野は、つい二三歩ばかり離れた艙口ハッチに、やっとのことで飛つくと、無我夢中で船内にころげこんだ。
地図にない島 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
そこでコンナ処に居ては険呑けんのんだと気が付いたから、出来るだけ深く水の底を潜って、慶北丸の左舷の艙口ハッチから機関室に潜り込んだ。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「水雷室の艙口ハッチを閉めろ! スパイキを持って来い! スパイキを! 甲板と艙口の間に、スパイキを突っえ!」
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
午前十一時武男は要ありて行きし士官公室ワートルームでてまさに艙口ハッチにかからんとする時、上甲板に声ありて
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
へさきの近くに小さな艙口ハッチが一つあるだけで、この艙口ハッチはストロムを渡ろうとするときには、例の狂い波の海にたいする用心として、しめておくのが習慣になっていました。
それぞれ部署もちばをきめて、艙口ハッチも開け放して、いざといえば君等に飛出して貰う手筈までつけたんだが、敵が早くも感づいたらしく、おれが自分の持場へ行こうとすると
中佐の後から後甲板の艙口ハッチをくぐってうす暗い艦内へ降りて行くと、すぐに艦長室につきあたる。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
ボートの連中を艙口ハッチから収容すると、今度は船員が漕ぎながら人間を拾い集める。綱を持った水夫を飛込ましてブカブカ遣っている連中を拾い集める。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
小雨の中に肩をすぼめて艙口ハッチを降りて行く伊那少年の背後うしろ姿は、世にもイジラシイあわれなものであった。
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)