船印ふなじるし)” の例文
その時、川口の方面から船印ふなじるしの旗を立てて進んで来る一そうの川船が彼の目に映った。彼はその船の赤い色で長官を乗せて来たことを知った。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
重喜しげよしの身の廻りの物を運ぶ侍女こしもとたちや、潮除しおよけの幔幕まんまくを張りめぐらす者や、かいをしらべる水夫楫主かこかんどり、または朱塗しゅぬりらんの所々に、槍お船印ふなじるしの差物を立てならべるさむらいなどが
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「菱垣にしちゃア小さすぎる。それに、菱垣の船印ふなじるしがねえや」
顎十郎捕物帳:13 遠島船 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
見ると、定紋じょうもんのついた船印ふなじるしの旗を立てて、港の役人を乗せた船が外国船からぎ帰って来た。そのあとから、二、三のはしけが波に揺られながら岸の方へ近づいて来た。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
日本も交易御開きに相成り候わば、御国の船印ふなじるし諸州の港にて見知り候よう相成り申すべく候。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)