けらい)” の例文
二十八日には千種ちぐさ家のけらいを殺して、その右の腕を千種家の邸に、左の腕を岩倉家の邸に投げ込むものがある。攘夷の血祭りだなんて言って、そりゃ乱脈なものさ。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
けらいは手燭を高くあげながら監物の傍へ寄って来た。監物は刀を隻手に持ち代えてそれで指し示した。不動の木像を乗せた台が倒れて木像のみは依然として立っていた。
不動像の行方 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
この藤川の宿場へは、常に、助郷すけごうにも出ていれば、荷持や馬方のかせぎにも、村から出ているのじゃ。気の毒ながら、吉良様の敵のけらいを、大手を振って、通さすわけにはまいらぬわい。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、監物の背後うしろを歩いていたけらいの一人が云った。その臣の背には獲物の牡鹿が乗っていた。
不動像の行方 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
けらいの耳には裏山の林に吹きつける風の音が聞えるばかりであった。
不動像の行方 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)