腐木くちき)” の例文
と、俄然主税の体が、刀をしっかりと握ったまま腐木くちきのように地に仆れた。斬られて死んで斃れたのではなかった。
仇討姉妹笠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
雨の夜は腐木くちきが燐火のように燃え、白昼沼沢地しょうたくちあしの間では、うわばみが野兎を呑んでいたりした。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
年を経た松やひのきや杉、梧桐や柏の喬木が、萩や満天星どうだんはぜなどの、灌木類とうちまじり、苔むした岩や空洞うろとなった腐木くちきが、それの間に点綴てんてつされ、そういうおそろしい光景を
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
非常に大きな苔むした岩や、自然に倒れた腐木くちきなどが、森のあちこちに転がっている。
南蛮秘話森右近丸 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
栗の木では栗鼠りすが鳴いていた。腐木くちきの洞では山猫が、何かに向かって唸っていた。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
腐木くちきの谷のほらの国、そこに住んでいる岩石人、みんなきたない片輪者だそうで、獣人族よりさらに一層、無智で下等だと申しますが、双玉の原の巫女みこの手から、勾玉まがたま管玉くだたまを盗みましたそうで……
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
眉輪まゆわの沼の岸の腐木くちきに、鬼火の姥は腰かけていた。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「ここは深山でございます。容易に里へは出られません。『腐木くちきの谷』でございます。でも妾達わたしたちにお逢いなされたのは、まだしも幸せでございました。お命には別状ございますまい。さあおいでなさりませ。妾達の住居へ参りましょう」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
腐木くちきの谷
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)