能面のうめん)” の例文
久保氏の手がけた伊賀の上島家文書中の能面のうめん覚エやら観世系図によると、観世流の始祖、観世清次きよつぐの母は、楠木正成のごく近親な者で
随筆 私本太平記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やはりその一瞬間、能面のうめんに近い女の顔に争われぬ母を見たからである。もう前に立っているのは物堅ものがたい武家の女房ではない。いや日本人の女でもない。
おしの (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
あの、微笑の、能面のうめんになりましょう。この世の中で、その発言に権威を持つためには、まず、つつましい一般市井人しせいじんの家を営み、その日常生活の形式に於いて、無慾。
春の盗賊 (新字新仮名) / 太宰治(著)
能面のうめんのような鏡の中の彼女の顔が、私の眼の前にいつも浮んできた。
溺るるもの (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
渋面じゆうめんつくつて能面のうめんそつくりだ