肉太にくぶと)” の例文
つい先日までは鉄金具の引手で、ほとんど円形に近い肉太にくぶとのものがありました。これらの棚や箪笥類をひさぐのは夷川えびすがわで、全町家具の通りであります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
以上挙げた以外にも、まぐろ類には値段の安い白色肉のめかじき(切り身用)、同じく白肉の黒皮、この黒皮まぐろは肉太にくぶとで、八、九十貫もあって値も安い。
鮪を食う話 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
実はぜんざいの何物たるかをさえわきまえぬ。汁粉しるこであるか煮小豆ゆであずきであるか眼前がんぜん髣髴ほうふつする材料もないのに、あの赤い下品な肉太にくぶとな字を見ると、京都を稲妻いなずますみやかなるひらめきのうちに思い出す。
京に着ける夕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
テレビン油のようなにおいがぷんぷんするのでそれがきょうの新聞である事がすぐ察せられた。はたして第一面には「聖寿万歳」と肉太にくぶとに書かれた見出しの下に貴顕の肖像が掲げられてあった。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
それには肉太にくぶと博士はくしのいつもの字で
すると、うしろから三番目の机の中ほどにいた小供が、席を立って先生の洋卓テーブルそばへ来て、先生の使った白墨を取って、塗板ぬりばんに書いてある記元節の記の字へ棒を引いて、そのわきへ新しく紀と肉太にくぶとに書いた。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)