考案かんがえ)” の例文
かくすには及ばんぞ、きいたら聞いたと言うがえ。そんなら乃父おれには考案かんがえがあるから。サア慝くさずに言うが可え。何か聞いたろう?』
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
一ツずつ、蜻蛉が別ならよかったんでしょうし、外の人の考案かんがえで、あの方、ただ刺繍だけなら、何でもなかったと言うんです。
縷紅新草 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
様々の物質と色々の薬品と、そして長い間の研究とで、製造り上げた人工の人間です。併し何のように考案かんがえても、心臓を造ることは出来ませんでした。
人間製造 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
縁起えんぎの悪いことお云いでないよ、面白くもない。そんなことを云っているより勢いよくサッと飲んで、そしていい考案かんがえでも出してくれなくちゃあ困るよ。
貧乏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
追つて相応な処のあるまで、何か後来の為になる手芸でも、覚えてみる事にしては、どんなものか。実は乃公も最初から、さういふ考案かんがえもあつたのなれど。
したゆく水 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
「そんなに度々何処から手紙が来るのか知ら……お待ちなさい、私も考案かんがえがある」
P丘の殺人事件 (新字新仮名) / 松本泰(著)
実地に就てのやくに立つ考案かんがえは出ないで、こうなると種々な空想を描いては打壊ぶちこわし、又た描く。空想から空想、枝から枝がえ、ほとんど止度とめどがない。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)