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老鶯
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おいうぐいす
けれど、
黄昏れの色深く、葉桜や若葉の蔭に、
老鶯の啼き迷うのが時々聞かれるぐらいなもので、本堂も
洞然、留守のような静けさだった。
老鶯が裏の林から時々のどかの声を洩らし、
筧の水がトコトコと池の中へ絶えず落ちている。
滝つぼには
落花の
芥が浮いたり沈んだりしていた。どこかで、
老鶯が啼きぬくのである。
畑を越した藪蔭から
老鶯が
嗄れた声で時々啼くのが聞こえて来る。
老鶯が啼きぬいている。花は落ちて
泥土に白い。鎌倉の春も更けたかと想わせる——
山科の里には、
老鶯が啼きぬいていた。