綾藺笠あやいがさ)” の例文
それに花やかな弓小手ゆごて、太刀を佩き短刀を差して頭に綾藺笠あやいがさ、腰には夏毛の行縢むかばき、背には逆顔さかづらえびら、手には覚えの弓、太くたくましい馬をかせて
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
衝天しょうてんの意気、思うべしで、海上には、尊氏の乗船が、数百そうの船列の中に、二引両の紋幕もんまくをヒラめかせているのが望まれ、陸路には、先陣をゆく少弐頼尚の、綾藺笠あやいがさの旗じるしが
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
栗毛くりげの馬に平文ひらもんくらを置いてまたがった武士が一人、鎧櫃よろいびつを荷なった調度掛ちょうどがけを従えながら、綾藺笠あやいがさに日をよけて、悠々ゆうゆうと通ったあとには、ただ、せわしないつばくらが、白い腹をひらめかせて、時々
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
と言っている時に、その人は桟敷の下へ来て綾藺笠あやいがさを振りかたげて桟敷の上を見上げました。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
兵馬は流鏑馬の時の綾藺笠あやいがさ行縢むかばきで、同じ黒いたくましい馬に乗って、介添かいぞえ的持まともちをひきつれて仮屋へ帰って、直ちに衣服を改めて編笠で面を隠して、大泉寺小路というのを、ひそかに廻って
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)