維摩ゆいま)” の例文
むか阿修羅あしゅら帝釈天たいしゃくてんと戦って敗れたときは、八万四千の眷属けんぞくを領して藕糸孔中ぐうしこうちゅうってかくれたとある。維摩ゆいまが方丈の室に法を聴ける大衆は千か万かその数を忘れた。
一夜 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
私の住家は昔の維摩ゆいま居士の方丈の庵室を真似て建てたのであるが、自分の行いや信仰の上に於ては一番魯鈍ろどんだったと言われている仏弟子の周利槃特しゅりはんどくのものにすら劣っているではないか。
現代語訳 方丈記 (新字新仮名) / 鴨長明(著)
院展に出した維摩ゆいまを文殊が説きに行く図の維摩の顔の形なり線なりが当時画家や世間の問題になって評判を生んだもので、それがどういう所から考えて描いたかという事を不思議がられ
能面と松園さんの絵 (新字新仮名) / 金剛巌(著)
正統の茶室の広さは四畳半で維摩ゆいま経文きょうもんの一節によって定められている。その興味ある著作において、馥柯羅摩訶秩多びからまかちった(二七)文珠師利菩薩もんじゅしりぼさつと八万四千の仏陀ぶっだ弟子でしをこの狭い室に迎えている。
茶の本:04 茶の本 (新字新仮名) / 岡倉天心岡倉覚三(著)
十大弟子、天竜八部衆、二組の四天王、帝釈・梵天、維摩ゆいま、などを除いて、目ぼしいものはみな観音である。これは観音像がわりに動かしやすいために、自然に集まってきたというわけかも知れない。
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)