細民さいみん)” の例文
いわゆる貸間長屋デネメントハウスというやつで、一様に同じ作りの、汚点しみだらけの古い煉瓦れんが建てが、四六時中細民さいみん街に特有な、あの、物のえたような
女肉を料理する男 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
しかすこしの米を京都におくることをもこばんで、細民さいみんが大阪へ小買こがひに出ると、捕縛ほばくするのは何事だ。おれは王道の大体を学んで、功利の末技を知らぬ。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
小女は浅草清島町という所の細民さいみんの娘なり。形は小さなれど年は十五にて怜悧れいりなり。かの事ありしのち、この家へ小間使こまづかいというものに来りしとなり。
良夜 (新字新仮名) / 饗庭篁村(著)
路地はそれらの浮世絵に見る如く今も昔と変りなく細民さいみんの棲息する処、日の当った表通からは見る事の出来ない種々さまざまなる生活がひそみかくれている。佗住居わびずまい果敢はかなさもある。隠棲の平和もある。
ことに細民さいみん街の特徴として、隣近所はすべて開放的に交渉しあっている。
女肉を料理する男 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
今度は、正午にまもないころだったと自分でも言っている。バアナア街は細民さいみん区のイースト・エンドでもちょっとした商店街の形態を備えていて、古風な狭い往来に織るような人通りがあふれている。
女肉を料理する男 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)