紙背しはい)” の例文
読返す程、紙背しはいからにじみ出して来る不気味さ。いくら年寄りでも、こんな場合には、少々神経過敏にならないではいられぬ。
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
紙背しはいとおすようなまなざしで、万吉が、その手紙、またほかの四、五通、残らず読んでみた時に、すべての疑雲は晴れていた。かれの想像は当っていた。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
眼力がんりき紙背しはいを貫くというのだから、たいへんである。いい気なものである。鋭さとか、青白さとか、どんなに甘い通俗的な概念であるか、知らなければならぬ。
一歩前進二歩退却 (新字新仮名) / 太宰治(著)
彼は「雨月物語」は全篇どれもこれもすきだった、あの夢の様な散文詩と、それから紙背しはいにうごめく、一種の変てこな味が、たまらなくいいというのだ。
百面相役者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
素材の史糸ししはどこまで史家の糸で織って行きたいと思うし、またすこしでも往時おうじの実際を紙背しはいに読む読者の試案にもなろうかと、折にふれお目にかけているにすぎない次第である。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)