紅毛こうもう)” の例文
足が曲った紅毛こうもうへきがんの紳士や、身体中ひだだらけで、馬鹿に顔のふくれ上った洋装美人が、様々の恰好かっこうで、日本流の見えを切っているのだ。
百面相役者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
紅毛こうもうとも言われ、毛唐人けとうじんとも言われた彼らは、この日本の島国に対してそう無知なものばかりではなかった。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
和漢三才図会わかんさんさいづゑによれば、南蛮紅毛こうもう甲比丹かびたんがまづ日本に舶載はくさいしたるも、このシガレツトなりしものの如し。
ちぢらし髪やどくどくしい口紅やいたずらに Actif な紅毛こうもう女のエキゾティシズムにはあきあきしている矢先とて、柄にもなく日本へのノスタルジアを感じさせたのだろう。
放浪作家の冒険 (新字新仮名) / 西尾正(著)
紅毛こうもう羅面絃弾者ラベイカひき
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
羅馬ロオマ大本山だいほんざん、リスポアの港、羅面琴ラベイカ巴旦杏はたんきょうの味、「御主おんあるじ、わがアニマ(霊魂)の鏡」の歌——そう云う思い出はいつのまにか、この紅毛こうもう沙門しゃもんの心へ、懐郷かいきょうの悲しみを運んで来た。
神神の微笑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
当時この国には、紅毛こうもうという言葉があり、毛唐人けとうじんという言葉があった。当時のそれは割合に軽い意味での毛色の変わった異国の人というほどにとどまる。一種のおかし味をまじえた言葉でさえある。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)