糊刷毛のりばけ)” の例文
すると、丁度その時、雌鶏は爺さんの油断を見すまして、荒縄から身をすりけ、土の上を走りだした。糊刷毛のりばけのような白い毛を羽根の先に残しているだけで、全くの丸裸になってしまっている。
南方郵信 (新字新仮名) / 中村地平(著)
二階に、柿田が病人と二人ぎりで居ると、階下したから種々いろ/\な話声が途切れ/\に聞える。トン/\トン/\と店の方で打つ経師屋らしい糊刷毛のりばけの音は、寝胼胝ねだこのあたつた内儀かみさんの身体からだに響けて来る。
死の床 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
伸子は糊刷毛のりばけを手に持ったまま耳を澄した。
伸子 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)