粗削あらけず)” の例文
ぎいぎいとかいが鳴る。粗削あらけずりにたいらげたるかし頸筋くびすじを、太い藤蔓ふじづるいて、余る一尺に丸味を持たせたのは、両の手にむんずと握る便りである。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
頭の上は大空で、否、大空の中に、粗削あらけずりの石のかたまりが挟まれていて、その塊を土台として、蒲鉾形かまぼこなりむしろ小舎が出来ている。
奥常念岳の絶巓に立つ記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
そして、その素人素人しろうとしろうとした粗削あらけずりなり口こそ、かえってその筋の苦労人の手足を封じ込めた最大の真因しんいんだった観がある。が、実際は、こうなるとすべてが運であり、一に機会の問題である。
女肉を料理する男 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)