簷端のきば)” の例文
街には宗徒むらがりて、肩と肩と相摩するさま、むかし紅海を渡りけん時も忍ばる。簷端のきばには古衣、雨傘その外骨董どもを、懸けもならべもしたり。
しばしありて、今まで木影こかげに隠れたる苫屋のともしび見えたり。近寄りて、「ハンスルが家はここなりや、」とおとなへば、傾きし簷端のきばの小窓きて、白髪の老女おうな、舟をさしのぞきつ。
うたかたの記 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
後は闃寂ひっそりして、下のちゃ簷端のきばにつるしてある鈴虫の声が時々耳につくだけであった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
簷端のきばには星が光って虫の声がしていた。
鮭の祟 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
聖ピエトロの伽藍がらんには中央なる大穹窿、左右の小穹窿、正面の簷端のきば、悉く透きとほりたる紙もて製したる燈籠を懸け連ねたるが、その排置いと巧なれば
家々の簷端のきばには、無數の椅子を並べて、善き場所はこゝぞと叫ぶ際物師きはものしあり。街を行く車は皆正しき往還の二列をなしたるが、これに乘れる人多くは假裝したり。