篆書てんしょ)” の例文
漢学者で仏典もくわしい。鄧完白とうかんぱく風の篆書てんしょを書く。漢文が出来て、Y県人の碑銘を多くえらんでいる。純一も名は聞いていたのである。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
黒塗の上へ篆書てんしょの金文字で神籤と書いたその箱の中には、象牙ぞうげを平たくけずった精巧の番号札が数通かずどおり百本納められていた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そこでその定窯の鼎の台座には、友人だった李西涯が篆書てんしょめいを書いて、りつけた。李西涯の銘だけでも、今日は勿論の事、当時でも珍重したものであったろう。
骨董 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
例えば最初どんな字体を習えばよいかと聞きますと、楷書、行書、草書と順をおい、隷書れいしょとか篆書てんしょとかは、あらゆる書を習得した後にやるべきものだということでした。
能書を語る (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
篆書てんしょでも隷書れいしょでも草書そうしょでも、学ばずして見事に書くので、見る人みな驚嘆せざるはなかった。
一冊は学科に関係のない事件の備忘録で、表題には生利なまぎきにも紺珠かんじゅという二字がペンで篆書てんしょに書いてある。それから机の下に忍ばせたのは、貞丈ていじょう雑記が十冊ばかりであった。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)