箱提灯はこぢょうちん)” の例文
その混雑のなかを押し分けて、箱提灯はこぢょうちんがゆらりゆらりと往ったり来たりしているのが外記の眼についた。彼は提灯の紋どころを一々いちいちにすかして視た。
箕輪心中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
油紙を張った箱提灯はこぢょうちんは風から囲ってあるため、役人たちの姿は見えるが、中庭のほうへは光がささなかった。
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
その加儀として、去年元服した若い者を請待しょうだいする——招待された客は、おのおのに箱提灯はこぢょうちんを持たせ、髪も異様に結い廻し、すべておかしき形を旨として出立する。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
わけても細川家の家士七百余人は、高張たかはり箱提灯はこぢょうちん、騎馬、駕、足軽などの順に——他の三藩より一足先に、そこから行列を進め、五十四万石という大藩だけに、見る眼も物々しい限りだった。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)