竦然しょうぜん)” の例文
きッと、めすえるようにして、言い放つ、浪路の目つきに触れると、甚太郎は、竦然しょうぜんと、肌が、粟立つのをすらおぼえるのだ——
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
駆けて行って見れば、扉は倒れ雨と風の中に山田春雄が竦然しょうぜんとして立っていた。折も折、稲光りがぴかぴか光ってそれは幽霊のようにおののいて見えた。
光の中に (新字新仮名) / 金史良(著)
ビーブ・ダニエルの乙に気取ったところだの、憤然たるもの、嫣然えんぜんたるもの、竦然しょうぜんたるもの、恍惚こうこつたるもの、見るに随って彼女の顔や体のこなしは一々変化し
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
と笑い出したが、それは尋常の笑いではなく、すなわち変態性慾者かないしは先天的犯罪人が、時あって洩らす残忍の笑いで、さすが豪勇の信玄も竦然しょうぜんとしたということである。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
竦然しょうぜんとした感じでふと思いだされて、自分はペンをいてふさぎこんでしまった。
死児を産む (新字新仮名) / 葛西善蔵(著)
京師の画工丸山主水もんど(応挙)、女鬼をえがくに名あり。予が蔵する物すぐれて妙なり。なにより思いを構えてえがきはじめたりしや、見る人、毛髪竦然しょうぜんとしてたち、実に神画と称すべし。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
そのひとはそういう今日の人の気風に竦然しょうぜんとしたと語った。
私の感想 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
私は竦然しょうぜんとした。
地球要塞 (新字新仮名) / 海野十三(著)
竦然しょうぜんとした感じで生々しい。
「健やかさ」とは (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
こう思って私は竦然しょうぜんとした。
秘密 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)