立往生たちおうじょう)” の例文
我々は冬になると新聞に、「裏日本一帯の吹雪、各列車立往生たちおうじょう、ラッセル車出動」などの文字を度々見るのである。
(新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
どうせうちを出る時に、水盃みずさかずきは済まして来たんだから、覚悟はとうからきめてるようなものの、いざとなって見ると、こんな所で弁慶べんけい立往生たちおうじょうは御免こうむりたいからね。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
立往生たちおうじょうをする代りに、籠堂へ坐り込んで一夜を明かした、が、百八煩悩ぼんのうを払うというなる初瀬はつせの寺の夜もすがらの鐘の音も、竜之助が尽きせぬ業障ごうしょうの闇に届かなかった。
彼は判断を下しねて、むしろ判断をしようともせず、一瞬間そこに立往生たちおうじょうをしていた。
灰神楽 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
僕は立往生たちおうじょうをしていた。そして怪物どものさわぎを、見まもっているしかなかった。
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
長安は空部屋をさがして支度したくせよといったが、見渡みわたしたところ、みなどうどうたる大名紋だいみょうもん幔幕まんまくばかりで、そんなところはありそうもなく、五人の勇士ゆうしも、それには、ちょッと立往生たちおうじょうしていると
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)