空隙すきま)” の例文
この財産と、未亡人を狙って女将セレスティンの肥満った心臓の空隙すきまへ入夫して来たのがミニィル・ヴァン・デル・ヴェルド君である。
ロウモン街の自殺ホテル (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
その空隙すきまの多い、中実の少ない行李を引っかついだ彼らは、あたかも移住民の一列のように続いて彼らのねぐらからサロンへとおもむいた。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
その片隅の大きな瓦斯暖炉の前の空隙すきまに、とうの安楽椅子が五ツ六ツ並んで、五月だというのに瓦斯の火がドロドロと燃えている。
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
人間の通れる……荷役の出来る処ならばどこでも構わない。空隙すきまのあらん限り押し込んでしまうので、石炭を積む処は炭庫すみぐら以外にほとんど無いと云っていい。
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
血にまみれた兇器と襯衣シャツや何かを一纏めにして、兼ねてから空隙すきまを作っておいた堆肥の下にくわの柄で深々と突込み、アトをわからないように崩し塞ぎ、附近の小川で顔や頭や手足を洗い清め
巡査辞職 (新字新仮名) / 夢野久作(著)