空廻からまわ)” の例文
舟は独楽こまみたいに空廻からまわりし初めている。のみならず、艫端ろばたに人間の腕だけが見える。盧は北京育ち、泳ぎを知らない。しかるにそのとき
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
僕は忠実なる同志の方に振り向こうともせず、無言のまま、寝椅子の上に腰を下した。五分か、十分か、それとも一時間か、時間は意識の歯車の上をはずれて、空廻からまわりをした。
人造人間殺害事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
時にまた、レールの上、十二、三インチの空間をあけて、かの直径七十吋余の截断刃せつだんじんが、むなしくその霊妙音を放って、ただに劉喨りゅうりょう粛々と空廻からまわりしているのである。その旋転光。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
ミキサーはやがて空廻からまわりを始めた。コンクリがすんで終業時間になった。
セメント樽の中の手紙 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)