稲葉山いなばやま)” の例文
そこは長良川の西岸で、東岸には稲葉山いなばやま黄昏ゆうぐれの暗い影をいてそそり立っていたが、そのいただき城櫓しろやぐらの白壁には、夕陽の光がちらちらと動いていた。
赤い土の壺 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
紅葉もみじした稲葉山いなばやまは、小雨に濡れたり、えたり、折から秋もけた頃だったので、朝夕に見ても見飽かなかった。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「斎藤家御一門の崩壊の危機。稲葉山いなばやま鷺山さぎやま、共に亡びんとするこよいの大事を防ぐためには——」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「家は、岐阜ぎふ大垣おおがきのあいだの、小野おのさとでございます。その小野を出て、稲葉山いなばやまの裏道で、連れの者と、待ちあわせる約束をしたのに、どうしたのか、その男がもどって来ませぬ……」
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
稲葉山いなばやま斎藤義龍さいとうよしたつ養父ちち道三山城守どうさんやましろのかみが、自分を廃嫡はいちゃくして、二男の孫四郎まごしろうか、三男の喜平次きへいじをもり立てようとしているのを察して、仮病けびょうを構えて、そのふたりを呼びよせ、これを殺してしまった。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
稲葉山いなばやまは、岐阜ぎふと改め、信長は岐阜城にすわった。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)