私事わたくしごと)” の例文
いわば私事わたくしごとになって、特に何かの参考となることでもありませんから、深く立ち入り、管々くだくだしくなることは避けたいと思います。
これまで、一家の食事ということは、どこの家でもかかされないことだのに、どういうわけか、めいめいの私事わたくしごとという風に考えられて来ました。
公のことと私のこと (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
「どうぞ。——まあ試しに使って見て下さい。あなたの御家おうちの——と云っちゃ余り変ですが、あなたの私事わたくしごとにででもいいから、ちょっと使って見て下さい」
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
けれど、今こそ、そんな小さな私事わたくしごとでなく、天下の大事をもたらして、猿殿にお会いできる日に行き着いた。
茶漬三略 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
香爐の紛失は言はゞ私事わたくしごと、こんな事を頼んではすまないが、これは金づくでも力づくでも叶はない。
かういふ場所で私事わたくしごとを語ることは、由来、私の最も好まぬところである。如何なる理由があらうとも、誰がどう勧めようとも、私は今日までその気持を押し通して来た。
妻の日記 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
すぐれた人間にんげんのこって、社会しゃかいのためにはたらくということは、けっして私事わたくしごとではないのだ。
村の兄弟 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そちが申し立てた最前からの怨みつらみは、すべてこの白洲の吟味上には、何の関りもない、私事わたくしごとじゃ。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私事わたくしごとをいってすまないが、おととしの六月生まれた香屋子というぼくの末の子が、ちかごろ、机の邪魔に来て、ぼくの膝にのったり、参考書などを掻きちらして閉口している。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私事わたくしごとの用向きではありません。……院のお使いとして、それもひそかに」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(白洲と、職能を、彼は私事わたくしごとに、紊乱ぶんらんさせてかえりみない)
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
が、今日は、私事わたくしごとで駈けつけたのではございませぬ。
茶漬三略 (新字新仮名) / 吉川英治(著)