神通じんずう)” の例文
えらいのね。でも悪魔、変化へんげばかりではない、人間にも神通じんずうがあります。私が問うたら、お前さんは、って聞けと言いましたね。
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
天狗の神通じんずうをもってして、不覚千万ふかくせんばんのようではあるが、かの杉の皮で鼻をはじかれて、人間という者は心にもないことをするから怖ろしいといった昔話などは、少なくともかつて人間と彼らとの間に
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
さればその方は先ず己を恥じて、匇々そうそうこの宝前を退散す可き分際ながら、推して神通じんずうを較べようなどは、近頃以て奇怪至極きっかいしごくじゃ。思うにその方は何処いずこかにて金剛邪禅こんごうじゃぜんの法を修した外道げどうの沙門と心得る。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
見ても、何でも分ったような、すべて承知をしているような、何でも出来るような、神通じんずうでもあるような、尼様だもの。
清心庵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
蟹五郎 神通じんずう広大——俺をはじめ考えるぞ。さまで思悩んでおいでなさらず、両袖で飜然ひらりと飛んで、はやく剣ヶ峰へおいでなさるがいではないか。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
新夫人にいおくさまの、まだ、海におれなさらず、御到着の遅いばかり気になされて、老人が、ここに形を消せば、瞬く間ものう、お姿見の中の御馬の前に映りまする神通じんずうを、お忘れなされて
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)