神田橋かんだばし)” の例文
「西丸の大手から、神田橋かんだばし馬場先ばばさき和田倉門わだくらもん、それから坂下二重門内の百人番所まで、要所要所は尾州の兵隊で堅めたとありますね。」
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
歳晩さいばんのある暮方、自分は友人の批評家と二人で、所謂いわゆる腰弁街道こしべんかいどうの、裸になった並樹の柳の下を、神田橋かんだばしの方へ歩いていた。
毛利先生 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「それはたいへんだが、……それならとにかく向こうの濠端ほりばたを右へまっすぐに神田橋かんだばしまで行って、そのへんでまたもう一ぺんよく聞いたほうがいいでしょう」
蒸発皿 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
歩くにしてもここからは、神田橋かんだばしの方へ向って行かなければならない。お君さんはまだ立止ったまま、埃風ほこりかぜひるがえるクリイム色の肩掛へ手をやって
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
その日、半蔵はみかどの行幸のあることを聞き、神田橋かんだばしまで行けばその御道筋に出られることを知り、せめて都を去る前に御通輦ごつうれんを拝して行こうとしていた。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
過ぐる年の献扇けんせん事件の日、大衆は実に圧倒するような勢いで彼の方へ押し寄せて来た。彼はあの東京神田橋かんだばし見附跡みつけあとの外での多勢の混雑を今だに忘れることができない。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
奉行から話のあった仕訳書上帳しわけかきあげちょうの郷里から届いたのも差し出してあり、木曾十一宿総代として願書も差し出してあって、半蔵らはかわるがわる神田橋かんだばし外の屋敷へ足を運んだが
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
道中奉行都筑駿河つづきするがの役宅は神田橋かんだばし外にある。そこには例の徒士目付かちめつけが待ち受けていてくれて、やがて三人は二部屋へや続いた広間に通された。旧暦六月のことで、ふすま障子しょうじなぞも取りはずしてあった。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
過ぐる年、東京神田橋かんだばし外での献扇けんせん事件は思いがけないところで半蔵の身に響いて来た。千載一遇とも言うべきこの機会に、村のものはまたまた彼が強い衝動にでも駆られることを恐れるからであった。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)