碧黒あおぐろ)” の例文
あたりは碧黒あおぐろい波間にみえ、二匹の龍が、自分に戯れからんでくる。自分はこわくて、逃げもがき、もがくうちにゴク、ゴク、ゴクと水を呑んだ……。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
倉庫で働いている男や、黙って荷積みをしている人夫の姿が、時々お庄の目にわびしく映った。碧黒あおぐろくおどんだ水には白い建物の影が浸って、荷船が幾個いくつ桟橋際さんばしぎわつながれてあった。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
月はなかったが、何といううつくしい星空だろう! 碧黒あおぐろい壁一めんに、銀のびょうを打ったような星がちかちかとかずかぎりもなくまたたいていて、手をのばしただけで、つかみ取れそうに近かった。
秘境の日輪旗 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
弟の腕には、牡丹ぼたんのような花が、碧黒あおぐろすみを入れられてあった。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)