まも)” の例文
他はみな見苦しくもあわふためきて、あまたの神と仏とは心々にいのられき。なおかの美人はこの騒擾の間、終始御者の様子を打ちまもりたり。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そして、其麽そんな所から此人はまあ、どうして此處まで來たのだらうと、源助さんの得意氣な顏を打まもつたのだ。それから源助さんは、東京は男にや職業が一寸見附り惡いけれど、女なら幾何いくらでも口がある。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
口上はいよいよ狼狽して、ん方を知らざりき。見物はあきれ果てて息をおさめ、満場ひとしくこうべめぐらして太夫の挙動ふるまいを打ちまもれり。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
白糸はびんおくれをき上げて、いくぶんの赧羞はずかしさを紛らわさんとせり。馭者は月に向かえる美人の姿の輝くばかりなるを打ちまもりつつ、固唾かたずみてその語るを待てり。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)