睡氣ねむけ)” の例文
新字:睡気
睡氣ねむけ交りに涙ぐんだが、少女心の他愛なさに、二人の弟が貰ふべき嫁を、誰彼となく心で選んでゐるうちに、何時しか眠つて了つた。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
我わが問ひをもてあきらかにしてし易き説をはや刈り收めたれば、我は恰も睡氣ねむけづきて思ひ定まらざる人の如く立ちゐたり 八五—八七
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
おのづから睡氣ねむけの差すまで、かうして過してゐる二三十分間が、彼れには一日中の最も樂しい時間であつた。
入江のほとり (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
紅い掻卷かいまきの裏が、妙に惱ましく眼について、八五郎も暫くはモジモジして居りましたが、半刻はんときばかり後には、恐ろしい睡氣ねむけと、初夏の薄寒さにこらへ兼ねて、お染に言はれた通り
されど此時後方うしろよりはやこなたにめぐり來れる民ありて忽ちわが睡氣ねむけをさませり 八八—九〇
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
その晩、主人の部屋に泊つたのは、相模女さがみおんなのお村。始めのうちは、大きい眼を開いて、看護みとるつもりでしたが、次第に猛烈に睡氣ねむけおそはれると、我にもあらず、健康ないびきをかいて寢込んで了ひました。