真鶴まなづる)” の例文
旧字:眞鶴
真鶴まなづるから湯河原までの軽便の汽車の中でも、駅から湯の宿までの、田舎馬車の中でも、信一郎の頭は混乱と興奮とで、一杯になっていた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
この「熱海の浦」の句を、足柄下郡の方では「真鶴まなづるみなとに云々」と歌い替えており、安房ではもとのままに「鹿島の浦に」と歌い上げていた。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
真鶴まなづるでは、大謀網に敵潜が突ッかけてしまいましたよ。ホラ貝をふくやら、大騒ぎしたそうですが、網をかぶったまま、逃げられちゃいましてね。
水鳥亭 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
水門のほうへゆるく弧をひろげた池のくまの、そこだけが夕陽で茜色に染まった乱杭石らんぐいせきのうえに、すすぼけた真鶴まなづるが一羽、しょんぼりと尾羽をばを垂れて立っている。冬木は
西林図 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
真鶴まなづるを通り越した時分に、またしても後ろから呼びかける声です。そうそうは振返ってもおられない。頓着なしに駕籠をやってしまうと、果して何事もなく、七ツには小田原着。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「焚火」、「真鶴まなづる」等の作品はほとんどかう云ふ特色の上に全生命を託したものであらう。
真鶴まなづるです。土肥郷の真鶴でございます」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
真鶴まなづる、日本水産会社大敷網。
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
したと云ってもいゝでしょう。湯河原へ行らっしゃるそうですね。それじゃ小使に御案内させますから真鶴まなづるまでお歩きなさい。死体の方は、引受けましたから、御自由にお引き取り下さい。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「じゃ、一番近くの医者を呼んで来るのだ。真鶴まなづるなら、遠くはないだろう。医者と、そうだ、警察とへ届けて来るのだ。又小田原へ電話が通ずるのなら、ぐ自動車を寄越すように頼むのだ。」
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)