目途もくと)” の例文
「にもかかわらず、その小勢は、ましぐらに前進中と聞えてくる。敵にも何ぞ目途もくとするところがなくてはかないませぬ。何か、目あてが」
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
美をして可能ならしめる社会の建設、彼はそれを目途もくととしてあらゆる彼の思想を展開した。彼は美の守護者であるが故に、社会主義者であった。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
人が軽々しく看過しがちな小さな事実の集積と、その周到なる比較とを目途もくとにした民俗学の方法は、こういう方面でこそ功を奏する望みがある。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
庄「いや/\かりても今の身の上では返えせる目途もくとがありませんからお借り申すことは出来ません」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
こうして取れた宝貝を、ことごとくおおやけ目途もくとに振り向けた期間が長かったために、本来の用法は忘れられたのであろうか。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
しかも誰か彼の作が原品たる「下手物」の美を凌駕りょうがし得たと言い切る勇気をもとう。実に多くの優れた作家たちは民器の美を彼らの高い目途もくとに置いていたのである。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
そも何者で? なんの目途もくと? すべて孫兵衛には見当がつかない。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それがいつともなく奇を競い変化を愛するようになって、ついには今日の如くただ大衆の笑を博することを、目途もくととしたかと思う話ばかり多くなったのである。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
これぞという定まった目途もくともなしに、いつまでも同じ調子の言葉をくり返すということは、いかに気ぜわしない雀とても、丸々その楽しみを奪われてはいない。
別に活用の目途もくとを拡大したヤスラカ・アキラカなどの、今も決して衰えておらぬのを見ると、カ行の導入のその後さらに著しいものがあったものとも推測し得られる。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)