白木蓮はくもくれん)” の例文
「寂しいとこ行きたい、誰も居やはらんとこ大好きどす。」すかしほろなかから、白木蓮はくもくれんのような横顔なのです。
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
白木蓮はくもくれんは花が咲いてしまってから葉が出る。その若葉の出はじめには実にあざやかに明るい浅緑色をしていて、それが合掌したような形で中天に向かって延びて行く。
柿の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
ところどころの家々に白木蓮はくもくれん連翹れんぎょうの花が咲いていたりして、平生ならばいかにも心が浮き立つような景色でありながら、矢張何となく重い気分にき込まれるのを防ぎようがなかった。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
障子を明けると、青空にうつる花ざかりの大きな白木蓮はくもくれんが、夜来の風雨に落花狼藉、満庭雪をいて居る。推参の客は主翁に対して久しぶりにうそと云うものをいた。彼は葛城家の使者だと云うた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
白木蓮はくもくれんの花咲きたりと話す声何処どこやらにして日の永きかな
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)