痴愚ちぐ)” の例文
旧字:癡愚
『尽すかぎりは尽しておる。ゆるにも及ぶまい。盛遠とて、根からの痴愚ちぐではなし、辻かための手にかかるほどなら……』
私の記憶ではやしろは二つあったように思われる。一つは縁切えんきりの神とせられ、一つは縁結びの神とせられて、痴愚ちぐな附近の男女の祈願所となっている。
宇賀長者物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
これは本より痴愚ちぐ瘋癲ふうてんの類で、三度も生れ代らなければ貧乏人にもなれぬ程の不幸な人で、論外である。
貧富幸不幸 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ここに神の真理の大河となり、洋々として大地を洗い、その不可抗の威力の前には、現在汝等なんじらを悩ます痴愚ちぐも、不信も、罪悪も、虚偽もみな跡方もなく一掃せられてしまうであろう。
これはわたくしの性の獰猛どうもうなのによるか。痴愚ちぐなるによるか。自分にはわからぬが、しかし、今のわたくしは、人間の死生、ことに死刑については、ほぼ左のような考えをもっている。
死刑の前 (新字新仮名) / 幸徳秋水(著)
元来が、彼は多分に痴愚ちぐな男である。その痴愚が働きだすと、ひと事ながら、声をあげて泣きたい気もちがしてきた。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自力門の修行は、智恵を窮めて生死しょうじを離れ、易行門いぎょうもんの修行は、痴愚ちぐにかえって極楽に生れるところにあるのでござる。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それには、小智、小惑、すべて小人の痴愚ちぐって、裸々ららたる一個の人間のままでお
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)