痛痒つうやう)” の例文
一撃に敵を打ち倒すことには何の痛痒つうやうも感じない代りに、知らず識らず友人を傷けることには児女に似た恐怖を感ずるものである。
侏儒の言葉 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
しかもこの不幸や遂に現世の不幸たるに留まる。不幸は不幸なりといへども、すでに現世を超越せる者に取りては畢竟ひつきやう何の痛痒つうやうをも感ずる者にあらざる也。
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
西はにしんを專らとし、東は鮭鱒けいそんを主とする。同じ建網税問題でも、前者に不利益なことが後者にさう痛痒つうやうを感じない。
泡鳴五部作:03 放浪 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
直接に痛痒つうやうを感ぜざればとて、遠大なる事業をしりぞくべきにあらず、況んや欧洲のみに戦争の毒気つるにあらずして、東洋も亦た早晩、修羅しゆらちまたと化して塵滅するの時なきにしもあらず
一種の攘夷思想 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
藤森氏の文は大家たいかたる宇野氏になん痛痒つうやうも与へぬであらう。だから僕は宇野氏の為にこの文をさうする必要を見ない。
解嘲 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)