病竈びょうそう)” の例文
たとえば内臓にしても、左肺門に病竈びょうそうのあることや、胃が五センチも下に垂れ下っていることなどを確めた。
ヒルミ夫人の冷蔵鞄 (新字新仮名) / 海野十三丘丘十郎(著)
右の胸には数本の白々とした肋骨ろっこつがくっきりと認められたが、左の胸にはそれらが殆んど何も見えない位、大きな、まるで暗い不思議な花のような、病竈びょうそうができていた。
風立ちぬ (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
カリエスの手術の際、外科医は完全に病竈びょうそうを消毒もし、自己の手腕も揮い得て、最早や一微片の腐骨も中に留めまいと確信して肉を縫い上げます。なんぞ図りましょう。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
然し彼は、窪田清音のいましめがあったばかりでなく、血を吐く胸の病竈びょうそうを自覚してからは、触れてならない花のように見ていた。そして、それをおかしかける自分の心を、時にはおそれた。
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして電磁気や光に関する理論の多くの病竈びょうそうはひとりでに綺麗に消滅した。
アインシュタイン (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
「いい塩梅に病竈びょうそうがどれも小さかったんですね」
風知草 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)