疳違かんちが)” の例文
「どうして遠近えんきん無差別むさべつ黒白こくびゃく平等びょうどうの水彩画の比じゃない。感服の至りだよ」「そうほめてくれると僕も乗り気になる」と主人はあくまでも疳違かんちがいをしている。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼女が喜こんで彼を見返そうとする刹那せつなに、「いや疳違かんちがいをしちゃいけない、何をしているかちょっとのぞいて見ただけだ。お前なんかに用のあるおれじゃない」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
こう思ったがむこうは文学士だけに口が達者だから、議論じゃかなわないと思って、だまってた。すると先生このおれを降参させたと疳違かんちがいして、早速伝授しましょう。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
いやしくも人格のある以上、それを踏み違えて、国家の亡びるか亡びないかという場合に、疳違かんちがいをしてただむやみに個性の発展ばかりめがけている人はないはずです。
私の個人主義 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
疳違かんちがいをして、男の子の玩具おもちゃを買おうとした継子は、それからそれへといろいろなものを並べられて、買うには買われず、すには止されず、弱っているところであった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)