異常いじょう)” の例文
足軽たちに話しかけても、だれもウンとも返辞へんじをするものがなかった。かれらの眼色めいろはまだ夜の明けぬまえの異常いじょう緊張きんちょうをもちつづけているらしい。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
このくにからもわれた老人ろうじんは、その、どこへいったか、るものはなかったのでした。そして、いつしか、ひすいにたいする異常いじょう流行りゅうこうは、やんでしまいました。
ひすいを愛された妃 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ともかくも気温や風の特異な垂直分布による音響の異常いじょう伝播でんぱと関係のある怪異であろうと想像される。
化け物の進化 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
偵察隊は、まず左門の遺骸いがいをほうむったぶなの木のほとりからだちょうの森に進んだ。フハンはうれしそうに先導せんどうしていたが、たちまち耳は張り、地に鼻をつけて、異常いじょうなにおいをかぎだした。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
見えぬがために、見ようとする、心の異常いじょうなはたらきが、心眼しんがんともいうべき感覚かんかくを全身にするどくいで、右手めてにつかんだ般若丸はんにゃまるを、おのれの背なかにかくしながら
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
異常いじょうなあわてかたをしてさけびだした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)