男髷おとこまげ)” の例文
老爺さんの二女——総領娘はある大名やしきに御殿奉公をしていた——私の母は九歳だったが、男髷おとこまげにしていたので小刀を差して連れられて逃げた。
旧聞日本橋:08 木魚の顔 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
三左衛門はって往った。怪しい黒ずんだ風変りな仏像の前に、前方向むこうむきにした男髷おとこまげの首がえてあった。
竈の中の顔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
それは特にめざましいもので、男髷おとこまげにゆって、はなやかな縮緬ちりめん襦袢じゅばんをつけた手古舞姿てこまいすがたの芸者でありましたから、兵馬といえども、呆気あっけに取られないわけにはゆきません。
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
多い毛を男髷おとこまげにあげて、先をザブリとったのが見得、双肌もろはだを脱いで、縮緬ちりめん長襦袢ながじゅばん一つになり、金沢町自慢の「坂上田村麿」の山車の先登に立つと、全く活きた人形が揺ぎ出したようで