田舟たぶね)” の例文
水だらけの子供を十人ばかり乗せ、櫓台の下へ田舟たぶねを漕ぎ近づけて、材木屋の貝原が、大声を挙げた。飛騨訛ひだなまりがそう不自然でなく東京弁に馴致じゅんちされた言葉つきである。
渾沌未分 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
流の幅は大分ひろく、田舟たぶねの朽ちたまま浮んでいるのも二、三艘に及んでいる。一際ひときわこんもりと生茂おいしげった林の間から寺の大きな屋根と納骨堂らしい二層の塔が聳えている。
葛飾土産 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
そういって木部は川べのあしを分けてしばらく姿を隠していたが、やがて小さな田舟たぶねに乗って竿さおをさして現われて来た。その時葉子は木部が釣り道具を持っていないのに気がついた。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
七日朝五、行方の船子ふなこ村へ逃げこんだ十一人は、忠兵衞といふ百姓を脅迫して五丁田から田舟たぶねを出させ、霞浦も三又近くのがれた處へ、小笠原某小舟數艘にて追駈け、鐵砲をぶちかけた。
天狗塚 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
田舟たぶねを借りて鷺を取りに行く足軽をあとに残して、一同はやかたへ帰った。
佐橋甚五郎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)