獦子鳥あとり)” の例文
……お嬢さん、奥方たち、婦人の風采ふうさいによつては、鶯、かなりや、……せめて頬白、獦子鳥あとりともあるべきところを、よこすものが、木兎か。……あゝ人柄が思はれる。
玉川の草 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
獦子鳥あとりや鶸が木の葉の如く西風に吹き飛ばされんとしつゝある。自分は此種の渡り鳥が殘酷なかういふ風に吹かれる爲めに何を求めて態々此地に來たであらうかと疑ひたくなる。
教師 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
つぐみひは獦子鳥あとり深山鳥みやま頬白ほゝじろ山雀やまがら四十雀しじふから——とてもかぞへつくすことが出來できません。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
秋深く木の実の熟するころにでもなると、幾百幾千のつぐみ獦子鳥あとり深山鳥みやま、その他の小鳥の群れが美濃方面から木曾の森林地帯をさして、夜明け方の空を急ぐのもその十曲峠だ。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
少々たいらな盆地になった、その温泉場へ入りますと、火沙汰ひざたはまた格別、……ひどいもので、村はずれには、落葉、枯葉、焼灰に交って、獦子鳥あとり頬白ほおじろ山雀やまがらひわ小雀こがらなどと言う、あかだ、青だ
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)