狂気染きちがいじ)” の例文
旧字:狂氣染
何故行ったか判らないが、少し狂気染きちがいじみた女だから、何だか夢のようにふらふら出掛けたらしいよ。で、あくる日茫然ぼんやり帰って来たんだ。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
私は、先刻さっきから、このなんとも批評の仕様もない、狂気染きちがいじみた夢物語に、半ば唖然あぜんとして、眼ばかりぱちぱちさせていた。
腐った蜉蝣 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
客車の入口のところに立ったまゝ絶えず天秤棒てんびんぼうゆすっている様子が如何にも狂気染きちがいじみていましたから念の為めに訊いて見ますと、鮎だと言うのです
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
それが夜ででもあればだが、真昼中狂気染きちがいじみた真似をするのであるから、さすがに世間がはばかられる、人の見ぬ間を速疾はやくと思うのでその気苦労は一方ならなかった。
しかも斯ういう長い年月の間、頭脳あたまうちに入れて置くとは、何という狂気染きちがいじみた事だろう、と書いたものなぞがあるが、頭脳が悪かったという事は、時々書いたものにも見えるようである。
北村透谷の短き一生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「災難……実に飛んだ災難だったよ。」と、安行も首肯うなずいて、「あんな狂気染きちがいじみた奴が飛び込んで来るというのは、う云う訳だろう。 ...
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
この場合に理屈を云っても仕方がない、おどしても仕方がない、こんな狂気染きちがいじみた女はなだめて還すより他はあるまいと思った。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)