燐火りんか)” の例文
これは燐火りんかにして物理的妖怪と申すものだが、学理を知らざるものは真に幽霊が地上より現れたごとくに思い、幽霊火と申している。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
市蔵は叱られて激した様子もなくますますあおい顔をして僕を見つめた。僕は燐火りんかの前にすわっているような心持がした。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
眼に燐火りんかを燃えたたせて、真ッさおに怒った窯焚かまたきの百助、捨てぜりふを残してまッしぐらにけだして行った。
増長天王 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その時沖を見ていた人の話に、霧のごとく煙のような燐火りんかの群が波に乗って揺らいでいたそうな。
(新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
宇宙の大に比べれば、太陽も一点の燐火りんかに過ぎない。いわんや我我の地球をやである。しかし遠い宇宙の極、銀河のほとりに起っていることも、実はこの泥団の上に起っていることと変りはない。
侏儒の言葉 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
もしくは暗黒のうちにひらめく燐火りんかか。
怪火のうちに不知火のごとき小虫より生ずるものあれど、鬼火、狐火、竜灯、天狗火などは、みな空中に浮遊せる燐火りんかであろうと思わる。
迷信解 (新字新仮名) / 井上円了(著)
この報告によれば、蜘蛛火は隕星いんせいなること明らかである。世間のいわゆる怪火は、隕星、電気、燐火りんか等を見て、これに種々の名を下すのが多い。
おばけの正体 (新字新仮名) / 井上円了(著)
最初は燐火りんかならんと思いたるも、だんだん近づくに従い、青白き顔の形が火の中に見ゆるのでビックリし、これは亡者の幽霊ならんと考え、ふるえ上がるほど怖くなったけれども
おばけの正体 (新字新仮名) / 井上円了(著)
かかる場所には燐火りんか水素が地下より発生して怪火を現出するものなるも、その方の経験がないために、墓場に限って怪火の発するものと思い、墓場は死骸を埋めてあるということから
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
これ、燐火りんかなることは明らかである。
おばけの正体 (新字新仮名) / 井上円了(著)