無辺際むへんさい)” の例文
冷然として古今ここん帝王の権威を風馬牛ふうばぎゅうし得るものは自然のみであろう。自然の徳は高く塵界を超越して、対絶の平等観びょうどうかん無辺際むへんさいに樹立している。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
死後の世界において、一つ一つ階段を登るにつれて、より多く神の愛、神の智慧の無量むりょう無辺際むへんさいであることが判って来たのである。が、われ等の神につきての知識は、それ以上にはでない。
ところがみているとただ小さいだけではなかった。無辺際むへんさいに大きな世界がそこに凝縮ぎょうしゅくされている小ささであった。そのゆえにその指さきの世界は私たちをひきつけてやまなかったのである。
花をうめる (新字新仮名) / 新美南吉(著)
吾人ごじんは吉凶共に、天地万有の天朝の恢復かいふくたすけ、しかし胡虜こりょを滅絶する所の真の命令を待つ。吾人はつつしんで天帝地皇、山河上穀の霊、六悪の霊、五方の五竜の霊、及び無辺際むへんさいの全神霊を拝す。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
眼のむさぼり、眼の食慾、眼のよろこび 眼から眼へ流れるものは無辺際むへんさい的なニュアンスと複雑さと簡明さをもっている。私はよくよくそばによって、あなたの眼のうちにうつっている自分を見たい。