無月むげつ)” の例文
軍配ぐんばいのてはずを、残りなくいいわたした民部みんぶは、ひとりそこにみとどまり、人穴攻ひとあなぜめの作戦を胸にえがきながら、無月むげつの秋の空をあおいで
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
戸をあけて甲板かんばんに出ると、甲板のあなたはさっきのままの波また波の堆積たいせきだった。大煙筒から吐き出される煤煙ばいえんはまっ黒い天の川のように無月むげつの空を立ち割って水に近く斜めに流れていた。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
また水寨すいさいの水軍などもあわせて無慮むりょ八千、或る夜、忍びやかに無月むげつ江灘こうたんを渡って総反撃に出て行った。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
無月むげつの春の夜は次第にけた。
クララの出家 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
そらは無月むげつ紺紙こんしはくをふきちらしたかのごとき星月夜ほしづきよ、——五遊星ゆうせい北極星ほっきょくせい北斗星ほくとせい、二十八宿星しゅくせい、その光芒こうぼうによって北条流ほうじょうりゅう軍学の星占ほしうらないをたてているらしい昌仙しょうせんは、しばらくあってのち
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
無月むげつの宴もまた、よかろうではないか」
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)