炉部屋ろべや)” の例文
奥には——いや炉部屋ろべやの側の竹窓がある小さい部屋には、その道三秀龍が、窓べりにもたれて、往来のほうを見まもっているのだった。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『あに、炉部屋ろべやへ置いてくらっせ、そっちへ喰べにゆくでの。おっ母も、客人と一緒にらんせ。ちっとも、気がねは要らんおらの友達じゃげな』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おまけに小僕こしもべの命松丸が、炉部屋ろべやのとなりに、さんばらな童頭わっぱあたまだけを夜具から見せて、熱臭く寝こんでいた。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
次の気配に耳を澄ましていると赤々と火の影の揺れているのは、くりやの次の炉部屋ろべやで、その部屋か、次の破れ障子の閉まっている辺りで、微かに、糸をつむぐ糸車の音がする。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
軍鶏籠とうまるかごは、籠のまま、炉部屋ろべやの次のすすけた板敷の隅へ担ぎ上げられた。無論、郁次郎は食い物も寝るのもそのまま、閾際しきいぎわには、寝ずの番が三名、夜どおし眼を光らしている。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)