濤音なみおと)” の例文
れんは捲かれ、四方は開け放たれ、ここも濤音なみおとのような松風のなかにって、夏もわすれる涼しさのかわりに、燭の明滅ははなはだしい。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
幾人の人を癒やし、幾人の人を殺した此寝台の上、親み慣れた薬の香を吸うて、濤音なみおと遠き枕に、夢むともなく夢むるのは十幾年の昔である。
二筋の血 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
此の頃にはかに其の影を見せぬは、必定函根はこねの湯気す所か、大磯おほいそ濤音なみおとゆるあたり何某殿なにがしどのと不景気知らずの冬籠ふゆごもり、ねたましの御全盛やと思ひの外、に驚かるゝものは人心
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
幾人の人を癒やし、幾人の人を殺した此寢臺の上、親み慣れた藥の香を吸うて、濤音なみおと遠き枕に、夢むともなく夢むるのは十幾年の昔である。
二筋の血 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
ああ濤音なみおとがする。この濤は、大明の岸をもち、南蛮の島々にしぶき、西欧の国へもつづいている。古来、この国の者は、何でこう日本の内にのみ屈曲してせめぎ合って来たことだろう。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
内海とはいえ、沖へ出ると、かなり大きな濤音なみおとが船体を横につ。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)