漿液しょうえき)” の例文
あざけってあきれるのであるが、なおそのおもいは果実の切口から滲み出す漿液しょうえきのように、激しくなくとも、ぐには止まらないものであった。
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
一瞬にして眼球が溶けくずれ、眼窩がんか漿液しょうえきが流れ出すように、その焼け穴は眼の下から頬にかけて、無気味にひろがって行き、愛らしいえくぼをもおおいつくしてしまった。
暗黒星 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
皮と骨の間に漿液しょうえきか何かが、いっぱいつまっているらしい。それが皮をぶりぶり動かせるのだ。
幻化 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
二十八日傷からしみ出しているのが漿液しょうえきとわかり、糸を切ってその水をよくとったらば熱もすっかり下り二十九日は一日六度台(朝6度夜八時六・九)、きょうは朝五・九で今六・一です。
アンディーヴの截片はお絹の口の中で慎重にみ砕かれた。青酸あおずっぱい滋味が漿液しょうえきとなり嚥下のみくだされる刹那せつなに、あなやと心をうつろにするうまさがお絹の胸をときめかした。
食魔 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
初めのうちはこんなにも大人に育って女性の漿液しょうえきあふれるような女になって
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)