漆桶うるしおけ)” の例文
つぶやきながら、膝をかかえていると、おびただしい馬の列が、背に漆桶うるしおけをつけて、何十頭か数も知れないほど、ふもとから追われてのぼって来た。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのふたりの乗用とみえ、少し離れたところの樹に、二頭の荷駄がつないであった。鞍には、二箇の漆桶うるしおけが両脇に積んであって、一方の桶には
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
前髪に頬かぶりの——城太とよばれた若者もまた——ここまで乗って来た荷駄の背から、漆桶うるしおけをみな降ろし、ふたを破って、土のうえに中の物をぶちまけた。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして、朝成の眼のまえに、例年のとおり十匹の伊達絹だてぎぬと、一げの漆桶うるしおけなどの土産物をならべた。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と迷った目をして、まだまだどっちを眺めても真暗な、漆桶うるしおけの中みたいな天地を見廻していた。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今にも戦争が始まる、織田軍が侵入してくると、昼ながら堺の殷賑いんしんもまるで墓場のようにさびれているのに、塗師ぬしの亭主だけは、きょうも漆桶うるしおけと共に、ぽつねんと、薄暗い店に坐っている。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)